今回は公証とアポスティーユについて解説していきます。
どちらも日常生活では馴染みのない言葉なので戸惑う方もおられると思います。
ですが、韓国学部留学には必ず公証とアポスティーユが必要なのでしっかりと抑えておきましょう。

説明の便宜上、公証とアポスティーユをまとめて書いていますが、本来は別物です。これから詳しく解説していきます。
新型コロナウイルスが流行する前まで7年間、韓国で生活しており、語学留学▶大学留学▶ワーホリ▶永住などの資格で滞在していました。現在は韓国語と留学の専門家として活動中。
結論から書くと、ここに書いてある内容さえ理解しておけば一人でもスムーズに申請することができるようになります。
なお韓国学部留学を念頭において解説していますが、D-4ビザ(語学研修)やE-2ビザ(会話指導)など、アポスティーユが必要という場合にも応用可能です。
それでは順番に見ていきましょう。
公証とアポスティーユとは?
公証とアポスティーユは別物だと書きました。
そもそも公証に関する業務は法務省になり、アポスティーユは外務省の管轄になります。
ところが、韓国学部留学に関する入学願書を読んでみると、公証とアポスティーユが必要であると書かれているのでややこしく感じてしまいます。
よってまずは公証とアポスティーユとは何なのか確認しておきましょう。
公証とアポスティーユの基礎知識
公証とアポスティーユについてホームページから引用します。
公証制度とは,国民の私的な法律紛争を未然に防ぎ,私的法律関係の明確化,安定化を図ることを目的として,証書の作成等の方法により一定の事項を公証人に証明させる制度です。
出典:法務省HP
公印確認,アポスティーユは,どちらも日本の官公署,自治体等が発行する公文書に対する外務省の証明のことです。
出典:外務省HP
試験を受けるわけではないので細かい制度や内容まで踏み込む必要はありません。
ただ提出する上で最低限知っておかなければならない知識があります。
それはアポスティーユとは公文書に対してのみ可能であり、公証人の認証を受ける前の私文書に対しては不可であることです。
公文書と私文書
少し専門用語が出てきたので解説していきます。
ざっくり説明すると公文書と私文書の違いはこうです。
- 公文書:公務員が作成した書類。
- 私文書:上記以外の書類。
例えば、市役所で発行した書類ですが、地方自治体の公印が押されてありますよね。
こうした公的機関の発行した公文書は「文書の成立について真正である」、要は信頼できる書類だと言えます。
一方で私文書についてはどうでしょうか。
大学のレポート、恋人への手紙、ポストに投函された広告やチラシなど、ジャンルは違ってもこれらは私文書という扱いになります。
今回出願時に必要となる大学の卒業証明書も実は公的機関が発行した書類ではないので私文書になります。

一部例外もあるのですが、それは後半で説明します。
公証人とは?
公証役場で法律サービスを提供している人が公証人です。
公証事務を依頼するためには、各都道府県にある公証役場にいきます。
では願書にかかれている公証を受けた書類とは一体何を指すのか?
それは、公証人から提出書類の認証を受けること、専門用語では私署証書の認証と呼ばれるものです。

この書類にある署名・押印は本人によるもであることを公的に証明してもらえます。
なぜ公証が必要なのか?
ここで疑問に思いますよね。
なんでこんな面倒な作業が必要なのかと。
実際に日本の役所や会社に私文書を提出する際に、公証が必要と言われることはほぼありません。
本人確認のための押印、署名をもって事足りるからです。
例外として自動車、保険、不動産などの取引においては、本人自身であることを証明するために実印が必要になります。
ただこの場合は実印と印鑑証明書さえ準備できればいいので、公証人による証明は必要ありません。
ところが、外国とのやりとりにおいては少し話が変わってきます。
残念ながら日本のように実印や印鑑証明書で証明することができません。
そこで公証人による認証という手続きを通じて「提出書類にある署名や押印がその人のものである」ことを公的に証明してもらうわけです。
通常外国に私文書を提出する場合には、書類の署名・押印だけでは不十分なため公的な認証が求められます。
アポスティーユの役割
ここまでの話を少し整理しておきましょう。
まず韓国の大学に書類を提出する場合、「韓国語・英語以外の言語で作成された文書に関しては翻訳公証が必要」と願書に書かれています。
つまり、日本語で作成された文書を提出する際には必ず公証が必要になります。(英語願書ではNotarizationと書かれてあります)
これだけでも問題なく提出できるのですが、一部書類についてはさらに別の公的機関による認証が求められます。英語では、Legalizationと呼ばれるものですが、これが領事確認・アポスティーユのことを指します。
公証人の認証したものに対する公的証明。平たく言えば二重チェックです。
領事確認とアポスティーユ
卒業証明書・成績証明書など学歴を証明する書類については「公的機関による認証」、言い換えると領事確認かアポスティーユが必要です。
両者の違いですが、ハーグ条約加盟国同士であればアポスティーユ、そうでなければ領事確認が必要になります。
少しややこしいのですが、領事確認に至るまでのステップは以下のようになります。
1.公証人による認証
2.法務局長による上記認証の証明<公証人押印証明>
3.外務省による公印証明<アポスティーユ>
4.在日大使館(領事館)による確認・認証<領事確認>
本来であれば4番の提出先国の在日大使館(領事館)による確認・認証が必要です。
ですが、日本と韓国はハーグ条約加盟国になるため領事確認が省略できます。よってアポスティーユが必要だと覚えておきましょう。
まとめ:公証とアポスティーユの関係
外務省による証明(アポスティーユ)は、公文書に対してのみ有効です。
例えば以下のような書類は公文書になります。
- 戸籍謄本・住民票の原本
- 公立学校の卒業・成績証明書(和文・英文)
一方で以下のような書類は私文書になるため、アポスティーユ申請前に公証の手続きが必要になります。
- 国立法人化した国立大学の発行した書類。
- 私立大学・短大・専門学校の発行した書類。
- 公的機関で発行された書類を日本語翻訳した書類。
この中で必ずアポスティーユが求められるのは卒業証明書、学校によっては追加で成績証明書です。
最後にアポスティーユ申請までの流れを整理しておきましょう。
外務省によるアポスティーユ申請がそのまま可能。
1.公証人による私文書の認証。
2.法務局長による押印証明。
3.外務省によるアポスティーユ。
つまり、公証とアポスティーユの関係を一言でいうと「アポスティーユ申請前に必要となり得る事前準備が公証」という風にざっくり理解してもらえたらいいと思います。

一応例外として独立行政法人化前の国立大学が発行した書類、学位記は公文書の扱いになります。
公証とアポスティーユの手続きと方法
ここまで読んで疲れた方もいると思います。
私自身も改めて書きながら疲れました笑。(不明点があればコメント欄からおっしゃってください!)
なぜここまで細かく書いたのかというと、第三者に依頼せずに公証〜アポスティーユを成功させるためには基本的な知識がないと、結局お金と時間だけを浪費してしまうからです。
もちろん、最初から行政書士などの専門家に依頼する場合には、数万円の手数料を払えば丸投げできます。
ただこの記事を読まれている方のほとんどが自分ひとりで入学願書を準備し、必要書類を提出しようと考えている人だと思います。
何も知らずに準備すると結局損するのは自分なのでこの機会に理解を深めておきましょう。
ではここから公証、アポスティーユを準備するための方法について解説していきます。
ステップ1:公証役場にいく
ネットで検索して最寄りの公証役場にいけば問題ありません。
公証が必要な書類、顔写真付きの身分証を持参していきましょう。
該当する公証事務ですが、正式には「私署証書の認証」になり手数料は1通5,500円です。
外国文書(英文)だと6,000円が加算されるので、11,500円が事実上の公証手数料になります。
ステップ2:ワンストップサービスが利用できる場合
本来であればこの後、アポスティーユの申請が待っているのですが、ワンストップサービスが利用できる場合はそちらを利用しましょう。
ワンストップサービスとは文字通り一箇所で全てをやってくれるサービスなのですが、なんと公証役場でアポスティーユまでしてくれる素晴らしい制度です。
利用する方法は簡単で、受付窓口で「ワンストップサービスを受けたい」と伝えれば必要な手続きをしてくれます。
なおアポスティーユの申請に関しては手数料がかかりません。
公証にかかった手数料のみでアポスティーユまでしてくれ、さらに即日で受理できる(稀に見る)便利なサービスです。

後述する別途アポスティーユ申請までの流れに比べると本当に楽です。
ワンストップサービスが受けられる条件
本当に素晴らしい制度なのですが弱点もあります。
それはワンストップサービスが受けられる公証役場は限定されているという点です。
具体的には下記都道府県内にある公証役場がワンストップサービスの対象になります。(2022年現在)
東京都・神奈川県・大阪府・愛知県・静岡県にある公証役場
少しづつサービスが拡大しているのですが、やはり人口の多い都市が対象になっています。
公証役場はどこで申請しても問題ないのか?
もちろん理想は最寄りの公証役場で申請することですが、もしワンストップサービス対象の都道府県に行くことが問題なければそうすべきです。
例えば、関西圏に住んでいる人の場合、交通費がかかっても大阪府内の公証役場でワンストップサービスをすることをおすすめします。
ステップ3:ワンストップサービスが利用できない場合
とはいえ全ての人がワンストップサービスを受けられるとは限らないため、その場合の方法について記述します。
公証手続きが終わったら、今度は法務局まで行って証明を受ける必要があります。
復習になりますが、公証人による認証に対する証明、要は二重チェックですね。(正式には公証人押印証明と言います)
こちらは窓口で申請用紙に記入するだけで手数料はかかりません。また即日付与されるので1日で準備することができると思います。
以下の都道府県内にある公証役場の場合、公証人による認証と法務局長による公証人押印証明を一度に取得できます。詳細については外務省HPを参照のこと。
・埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、長野県、新潟県
ステップ4:外務省でアポスティーユの申請
残念ながら即日付与はここまでで、最後のアポスティーユの単体申請は少し時間がかかります。
申請方法は次の3通りの方法があります。
- 外務省本省(東京)の窓口で申請
- 外務省分室(大阪)の窓口で申請
- 郵送での申請
新型コロナウイルス感染予防対策のため郵送での申請が推奨されています。電話での事前予約が必要な場合もあるので必ず外務省ホームページから随時情報を確認するようにしてください。
申請に必要なもの
- 身分証(郵送申請の場合は不要)
- 申請書(外務省HPからダウンロードして作成・印刷)
- 証明が必要な公文書(公証を受けた書類のこと)
- 返送用封筒(レターパックなど)
特に問題なければ申請受理後3日ほどで返送されるみたいです。
アポスティーユ自体には手数料はかかりませんが、レターパック代、郵送での申請の場合、切手代は必要です。
まとめ:公証〜アポスティーユ申請方法
ここまでの流れを整理しておきましょう。
まず公証役場に行きます。ここは共通項目ですね。
次にワンストップサービスの有無によってアポスティーユ申請の方法が変わります。
公証役場にて完結。
公証役場、法務局、外務省での手続きが必要。
ワンストップサービスが受けられない場合には、公証役場から法務局までは窓口で申請し、アポスティーユ申請は郵送での申請になる場合がほとんどだと思います。
というのも東京、大阪はワンストップサービスが可能なので、わざわざ外務省窓口まで行ってアポスティーユ申請する必要はないので。

参考までにアポスティーユ対象国ではない場合には領事確認が必要となりワンストップサービスはできません。
公証・アポスティーユに関するよくある質問
最後にアポスティーユに関するよくある質問をまとめておきます。
アポスティーユが必要になるのはいつ?

出願する大学によって異なりますが、最低2回は必要になります。1回目は出願時に、2回目は入学手続き時とビザ申請をする際にアポスティーユ付きの卒業証明書の提出が求められます。
家族関係証明書の提出時に公証は必要?

戸籍謄本を提出する場合、公文書になるので公証はできません。一方で戸籍謄本を日本語翻訳した書類は私文書の扱いになるので公証が必要になります。
提出書類をまとめてワンストップサービスするのは可能?

結論からいうと可能です。ただし出願する大学が複数ある場合には、別々に公証(ワンストップサービス)してもらう必要があるため、出願先の数だけで手数料が発生します。
出身高校の卒業証明書のアポスティーユを取得するには?

公立高校か私立高校なのかによって変わります。公立高校の場合には公文書の扱いになるため、そのままアポスティーユが申請可能です。私立高校の場合には公証役場での認証後、アポスティーユの申請が可能になります。
英語の卒業証明書が発行できない場合には?

原則として韓国語・英語以外の書類は全て翻訳版の公証が必要です。よって日本語の卒業証明書しか発行してもらえない場合には、自分自身で翻訳したものを提出するか、場合によっては専門業者に翻訳してもらった書類を提出しなければなりません。
学位記(卒業証書)に対してもアポスティーユは可能?

できますがおすすめしません。詳細については外務省HPを参考にしてください。
卒業見込み証明書ではアポスティーユはできない?

卒業見込み証明書に対してもアポスティーユは可能です。ただし最終的には卒業証明書のアポスティーユが必要になります。
韓国の大学新学期までにアポスティーユが間に合わない場合は?

日本は3月卒業、韓国は3月から入学というように学制が異なります。そのため「入学までに卒業証明書が間に合わない」という相談がありますが、こちらは韓国の大学から個別にアポスティーユ書類の提出期限が伝えられる場合がほとんどです。韓国側も日本の学制については把握しているのでそこまで心配する必要はありません。
「公証制度について」法務省HP
「公証人押印証明」東京法務局HP
「アポスティーユについて」外務省HP
「留学ビザ・査証」駐日本国大韓民国大使館HP
今後法令の変更により制度が変わる可能性もあります。法務省や外務省ホームページの他、留学ビザ(D-2)申請時には駐日韓国大使館・領事館ホームページなども参考になさってください。

韓国語講師&留学カウンセラー【経歴】大学院卒(修士)▶ソウルにある大学に留学▶韓国で日本語教師▶永住権を取得し帰国▶現職。【韓国留学経験】超円高時代(最大1円=16ウォン)だったこともあり学生時代には5つの語学堂に通ったことがあります。
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