今回は公証とアポスティーユについて解説していきます。
どちらも日常生活では馴染みのない言葉なので戸惑う方もおられると思います。
ですが、韓国正規留学には必ず公証とアポスティーユが必要なのでしっかりと抑えておきましょう。
- 韓国で語学留学するためにD-4(語学研修ビザ)を申請する人。
- 韓国の大学に正規留学するために出願書類を準備している人。
- 2012年から2019年まで韓国ソウルに在住。
- 語学留学▶大学留学▶ワーホリ▶永住などの資格で滞在。
- 現役の韓国語講師であり韓国留学コーディネーター。
結論から書くと、ここに書いた内容さえ把握しておけば1人でもスムーズにアポスティーユの申請をすることができるようになります。
なお韓国正規留学を念頭において解説していますが、D-4ビザ(語学研修)やE-2ビザ(会話指導)など、アポスティーユが必要という場合にも応用可能です。
それでは順番に見ていきましょう!
公証とアポスティーユとは?
公証とアポスティーユは別物だと書きました。
そもそも公証に関する業務は法務省で、アポスティーユは外務省の管轄になります。
ところが、韓国正規留学に関する入学願書を読んでみると、公証とアポスティーユが必要であると書かれているのでややこしく感じてしまいます。
なのでまずは公証とアポスティーユとは何なのか確認しておきましょう。
公証とアポスティーユの基礎知識
公証とアポスティーユについてホームページから引用します。
公証制度とは,国民の私的な法律紛争を未然に防ぎ,私的法律関係の明確化,安定化を図ることを目的として,証書の作成等の方法により一定の事項を公証人に証明させる制度です。
出典:法務省HP
公印確認,アポスティーユは,どちらも日本の官公署,自治体等が発行する公文書に対する外務省の証明のことです。
出典:外務省HP
細かい制度や内容まで理解する必要はありません。
ただし提出する上で最低限、知っておかなければならない知識があります。それは、、
アポスティーユとは公文書に対してのみ可能であり、公証人の認証を受ける前の私文書に対してはできません。
公文書と私文書
専門用語が出てきたので解説していきます。
ざっくり説明すると公文書と私文書の違いはこうです。
- 公文書・・公務員が作成した書類。
- 私文書・・上記以外の書類。
例えば、市役所で申請して受け取った書類には、必ず地方自治体の公印が押されてありますよね。
こうした公的機関の発行した公文書は「文書の成立について真正である」、、要は信頼できる書類だと言えます。
一方で私文書についてはどうでしょうか。
大学のレポート、恋人への手紙、ポストに投函された広告やチラシなど、ジャンルは違ってもこれらは私文書という扱いになります。
そして今回、韓国留学で要求されている高校/大学の卒業証明書も公的機関が発行した書類でなければ私文書の扱いになります。
公証人
もう一つ専門用語、公証人という聞き慣れない言葉についてです。
公証人とは「公証役場で法律サービスを提供している人」です。
なので出願書類にある「公証を受けた書類」を依頼するためには、各都道府県にある公証役場に行く必要があります。
では「公証を受けた書類」とは一体何を指すのでしょうか?
それは、公証人から提出書類の認証を受けること、専門用語では私署証書の認証と呼ばれるものです。
補足:そもそもなんで公証が必要なのか?
なんでこんな面倒な作業が必要なのかと疑問に思いませんか?
おそらく日常生活において「公証が必要です」と言われる機会はあまりないと思います。
というのも本人確認のために押印、署名で済ませることがほとんどだからです。
自動車・保険・不動産などの取引においては、本人自身であることを証明するための実印と印鑑証明書が必要ですが、この場合も公証人による証明は必要ありません。
ところが、外国とのやりとりにおいては、日本のように押印、印鑑証明書による証明というのが通じないケースがほとんどです。
そこで公証人による認証という手続きを通じて「提出書類にある署名や押印がその人のものである」ことを公的に証明してもらうわけです。
留学のように外国の機関に私文書を提出する場合には、書類の署名・押印だけでは不十分なため公的な認証が求められます。
アポスティーユの役割
ここまでの話を少し整理しておきましょう。
まず韓国の語学学校や大学に出願書類を提出する場合、「韓国語・英語以外の言語で作成された文書に関しては翻訳公証が必要」と書かれているケースがほとんどです。
つまり、日本語で作成された文書を提出する際には必ず公証が必要になります。(英語願書ではNotarizationと書かれてあります)
これだけでも問題なく提出できるのですが、一部の書類についてはさらに別の公的機関による認証が求められます。
英語では、Legalizationと呼ばれるものですが、これが領事確認・アポスティーユのことを指します。
公証人の認証したものに対する公的証明。要はダブルチェックです。
領事確認とアポスティーユの違い
卒業証明書・成績証明書など学歴を証明する書類については「公的機関による認証」、言い換えると領事確認かアポスティーユが必要です。
両者の違いですが、ハーグ条約加盟国同士であればアポスティーユ、そうでなければ領事確認が必要になります。
少しややこしいのですが、領事確認に至るまでのステップは以下のようになります。
処:公証役場
処:法務局
処:外務省
処:在日大使館(領事館)
本来であれば、4番の提出先国家の領事館による確認と認証が必要です。
ですが、日本と韓国はハーグ条約加盟国のため領事確認が省略できます。
ハーグ条約加盟国以外の国に留学する場合には領事確認が必要です。韓国に留学する場合にはアポスティーユまでで大丈夫です。
まとめ:公証とアポスティーユの関係
まずは私文書と公文書について確認してみましょう。
例えば、韓国の大学に出願するために提出する以下の書類は公文書になります。
- 戸籍謄本・住民票の原本
- 公立高校の卒業・成績証明書
一方で以下の書類は私文書の扱いになるため、公証の手続きが必要になります。
- 国立大学法人化後に国立大学が発行した卒業・成績証明書
- 私立大学・短大・専門学校の発行した卒業・成績証明書。
- 公的機関で発行された書類を翻訳した書類。
この中で必ずアポスティーユが求められるのは、卒業証明書、学校によっては追加で成績証明書です。
最後にアポスティーユ申請まで公文書と私文書の場合に分けて整理しておきます。
- 公文書の場合
-
外務省によるアポスティーユ申請がそのまま可能。
- 私文書の場合
-
- 公証人による私文書の認証。
- 法務局長による押印証明
- 外務省によるアポスティーユ。
公証とアポスティーユの手続きと方法
ここまで読んで疲れた方もいると思います。
私自身も改めて書きながら疲れました笑。(不明点があればコメント欄からおっしゃってください!)
なぜここまで細かく書いたのかというと、第三者に依頼せずに公証〜アポスティーユを成功させるためには基本的な知識がないと、結局お金と時間だけを浪費してしまうからです。
もちろん、最初から行政書士などの専門家に依頼する場合には、数万円の手数料を払えば丸投げできます。
ただこの記事を読まれている方のほとんどが自分ひとりで入学願書を準備し、必要書類を提出しようと考えている人だと思います。
何も知らずに準備すると結局損するのは自分なのでこの機会に理解を深めておきましょう。
ではここから公証、アポスティーユを準備するための方法について以下の流れで解説していきます。
ステップ①:公証役場にいく
ネットで検索して最寄りの公証役場にいけば問題ありません。
公証が必要な書類、顔写真付きの身分証を持参していきましょう。
該当する公証事務ですが、正式には「私署証書認証」になり手数料は1通5,500円です。
私署証書認証の申請書の記入欄には、和文と英文が選択できますが、後者だと6,000円が加算されます。ただこれは後述する宣言書を英文等で作成して持参した場合です。
和文と英文、どちらで作成するか悩む人もいると思いますが、日本語で宣言書を作成しても問題ないと筆者は考えています。
その理由としては、宣言書を日本語で作成しても、それ以外の言語で作成しても、公証人の認証文自体は日本語になるからです。
ですが、今回のように外国の機関に提出する書類の場合には、認証文の英訳版を添付するかことができるサービス(無料)があるので、申請書にチェックするようにしておきましょう。
「私署証書の認証」に必要な準備物は以下の通りです。
- 宣言書(書式自由)
- 公証を受ける書類
補足:宣言書とは?
日本の公証制度は「文章の内容の真実性」を審査するものではありません。
「文書の作成者の署名又は記名押印のある私文書(私署証書)について、その文書になされた署名又は押印が文書の作成名義人によって行われたことを、公証人が証明する制度」になります。
例えば、卒業証明書であれば、そこに押されてある学校印についての証明になります。
なので、宣言書では「提出するこれらの書類は〇〇の□□に間違いありません(又は外国語に翻訳した内容は原文と相違ありません)」という内容と公証を受ける書類のリストを書き、最後に公証人の前で日付と署名をする必要があります。
- 提出書類する書類を全て宣言書にまとめて書く。(日本語で大丈夫です)
- 学歴証明書の場合「〇〇大学から発行された卒業証明書ならびに成績証明書」と書く。
- 事前にホームページからWordファイルをダウンロードして作成する。参考リンク:京橋公証役場HP
- 日付と署名の欄は空けておく。(公証人の前で署名する必要があるため)
ステップ2:ワンストップサービスを利用する場合
本来であればこの後、法務局での別の手続きが待っているのですが、ワンストップサービスが利用できる場合はそちらを利用しましょう。
ワンストップサービスとは文字通り一箇所で全てをやってくれるサービスなのですが、なんと公証役場でアポスティーユまでしてくれる素晴らしい制度です。
利用する方法は簡単で、受付窓口で「ワンストップサービスを受けたい」と伝えれば必要な手続きをしてくれます。
なおアポスティーユの申請に関しては追加で料金が発生しません。
公証にかかる手数料のみでアポスティーユまでしてくれ、さらに即日で受理できる(稀に見る)便利なサービスです。
つまり、1日で公証からアポスティーユまで済ませることができるのでこれで手続きは終わりです。
ワンストップサービスが受けられる条件
本当に素晴らしい制度なのですが弱点もあります。
それはワンストップサービスが受けられる公証役場は限定されているという点です。
具体的には下記の都道府県内にある公証役場がワンストップサービスの対象になります。(2024年現在)
東京都・神奈川県・大阪府・愛知県・静岡県・北海道(札幌法務局管轄内)・宮城県・福岡県にある公証役場
参照:外務省ホームページ
少しづつサービスが拡大しているのですが、やはり人口の多い都市が対象になっています。
どこの公証役場で申請しても問題ないのか?
もちろん理想は最寄りの公証役場で申請することですが、もしワンストップサービス対象の都道府県に行くことが問題なければそうすべきです。
例えば、関西圏に住んでいる人の場合、交通費がかかっても大阪府内の公証役場でワンストップサービスをすることをおすすめします。
もしワンストップサービス対象外の公証役場で手続きをする場合には、ステップ3に進んでください。
ステップ3:ワンストップサービスを利用しない場合
全ての人がワンストップサービスを利用することができるとは限らないため、その場合の方法について記述します。
公証手続きが終わったら、今度は法務局まで行って証明を受ける必要があります。
これは公証人による認証に対する証明、要はダブルチェックですね。(正式には公証人押印証明と言います)
こちらは窓口で申請用紙に記入するだけで手数料はかかりません。また即日付与されるので1日で準備することができると思います。
以下の都道府県内にある公証役場の場合、公証人による認証と法務局長による公証人押印証明を一度に取得できます。詳細については外務省HPを参照ください。
埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、長野県、新潟県
ステップ4:外務省でアポスティーユの申請
残念ながら即日交付はここまでで、最後のアポスティーユの単体申請は少し時間がかかります。
申請方法は次の3通りの方法があります。
- 外務省本省(東京)の窓口で申請
- 外務省分室(大阪)の窓口で申請
- 郵送での申請
アポスティーユ申請に必要なもの
- 身分証(郵送申請の場合は不要)
- 申請書(外務省HPからダウンロードして作成・印刷)
- 証明が必要な公文書(公証を受けた書類のこと)
- 返送用封筒(レターパックなど)
特に問題なければ申請受理後3日ほどで返送されるみたいです。
アポスティーユ自体には手数料はかかりませんが、レターパック代、郵送での申請の場合、切手代は必要です。
まとめ:公証〜アポスティーユ申請方法
ここまでの流れを整理しておきましょう。
まず公証役場に行きます。ここは共通項目ですね。
次にワンストップサービスの有無によってアポスティーユ申請の方法が変わります。
公証役場で「公証からアポスティーユ」まで申請可能。
公証役場、法務局、外務省での手続きが必要。
ワンストップサービスを利用しない場合には、公証役場から法務局までは窓口で申請し、アポスティーユ申請は郵送での申請になる場合がほとんどだと思います。
というのも東京、大阪はワンストップサービスが可能なので、わざわざ外務省窓口まで行ってアポスティーユ申請する必要はないので。
公証・アポスティーユに関するよくある質問
最後にアポスティーユに関するよくある質問をまとめておきます。
「公証制度について」法務省HP
「公証人押印証明」東京法務局HP
「アポスティーユについて」外務省HP
「留学ビザ・査証」駐日本国大韓民国大使館HP
今後法令の変更により制度が変わる可能性もあります。法務省や外務省ホームページの他、語学研修ビザ(D-4)、留学ビザ(D-2)申請時には駐日韓国大使館・領事館ホームページなども参考になさってください。
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