今回は韓国への語学留学ではなく学部留学について解説していきます。
なおここでは語学留学と学部留学について以下のように定義しておきます。
語学留学・・語学堂に入って主に韓国語を勉強するための留学
学部留学・・韓国の4年制大学や専門大学に留学して学位を取得するための留学

一般的には語学留学の方が広く知られていますが、学部留学に興味のある方は読み進めてください。
新型コロナウイルスが流行する前まで7年間、韓国で生活しており、語学留学▶大学留学▶ワーホリ▶永住などの資格で滞在していました。現在は韓国語と留学の専門家として活動中。
先に結論を書いておくと、韓国の大学に入学すること自体はそれほど難しくはありません。
ただし準備する過程をしっかり頭の中に入れておく必要はありますので、ぜひ何度もこの記事の内容を見返してみてください。
韓国への留学(入試制度)
まずは外国人留学生が韓国の大学に入学するための入試制度から確認しておきましょう
一般入試と外国人入試
韓国での大学入試といえば修学能力試験(수능)が広く知られています。
例年11月の木曜日に実施され、日本の共通テスト(旧センター試験)に該当する大学共通の入学試験になります。
こちらは韓国人の高校生が対象となる試験です。
外国人留学生には専用の試験が用意されているので、以下の条件に当てはまる人はそちらを受験して留学することになります。
1.両親、志願者本人ともに韓国の国籍ではない。
2.高卒(卒業見込み)以上の学歴。
3.TOPIK3級以上の成績表を提出できる者。
以上3つの項目が外国人留学生試験において共通する出願資格になります。
入学時期
日本より1ヶ月早い3月(春学期)、9月(秋学期)の2学期制です。
ほとんどの大学で春入学、秋入学の外国人留学生試験を募集しており、競争率や難易度に大きな違いはありません。
ただ高卒見込みの資格で受験する人は、3月入学を目指す場合が多いようです。
受験可能な大学
韓国最難関の大学であるソウル大学、KAIST(韓国科学技術院)などの国立大学も受験できます。
他にも留学生に人気のある延世大学や高麗大学などの私立大学も募集しています。
ただし編入学試験については国立のソウル大学、ソウル教育大学では募集をしていないなど、最終的には各学校が公開している願書をじっくり読む必要があります。
韓国大学留学を実現するまでの全行程
それではここから、大学留学までの全行程について見ていきましょう。
行程①:韓国語能力試験を受ける。
行程②:新入学か編入学か選択する。
行程③:願書をダウンロードする。
行程④:出願に必要な書類を準備する。
行程⑤:自己紹介書・面接対策をする。
行程⑥:入学手続きをする。
行程⑦:渡航準備をする。
行程①:韓国語能力試験を受ける
まずは韓国語能力試験(TOPIK)のホームページに入り、直近で受験可能な日程を確認します。
日本で受験する場合、例年4月、7月、10月に実施されていますが、申込締切が早いため注意が必要です。
ここで大事なことを一つ言っておきます。
韓国への大学留学を目指すのであれば、TOPIKのスコア=パスポートだと思ってください。
すなわちTOPIKの成績表が出せないということは、大学留学の入り口にすら立てていないということです。
TOPIK5−6級(高級)を取得することは、それほど難しいことではありません。しっかり対策をすれば誰でも取得可能な資格です。
※TOPIKの成績表がなくとも入学できる大学も存在はします。ただしこうしたTOPIK免除の大学であっても、休学して語学堂での韓国語義務履修制度が設けれている場合がほとんどです。
行程②:新入学か編入学か選択する
現在高校3年生の方であれば新入学になります。
一方で現在大学生、専門学生などであれば、編入学という選択肢もあります。
編入学を目指す場合以下の2つに分かれています。
- 大学2年次編入
- 大学3年次編入
よくあるパターンとしては、大学、専門学校で2年間在籍した後、韓国の大学3年次に編入するという人です。
長所:学費が2年間だけになるので安くなり、入学後すぐに専門科目が履修可。
短所:新入学に比べると要求される韓国語レベルの水準が高いため入学難易度がやや高い。

どちらがよいのかについては、ご自身の置かれている状況によって変わってくるのでじっくり検討を。
行程③:願書をダウンロードする
ここからがいよいよ大学選び、学部選びです。
日本の大学と異なり、韓国の入学願書は無料です。
また郵送での資料請求というのはなく、各大学のホームページからPDFファイルをダウンロードする形式がほとんどです。
紙で読みたいという人は自宅やコンビニでプリントアウトして読むことになります。
さて願書を手に入れたら、以下の項目について見比べてみましょう。
- 受験日程
- 面接の有無
- 募集学部
受験日程
例えば、A校とB校の併願を考えている場合、面接日が被っていると問題ですよね。
このあたりは日本の私立大学受験と似たような感覚になりますが、確実に韓国の大学に留学したいというのであれば、2−3校は併願しておくべきだと考えます。
面接の有無
韓国の外国人留学生入試は、書類選考か面接試験、実技試験の大きく3種類に分かれています。
国立大学では面接試験が多く、私立大学は書類選考のみのところが多い傾向にあります。
書類選考に関しては、後述する自己紹介書が評価に大きく影響するのでしっかり準備する必要がありますし、面接に自信のある方は、あえて面接を選ぶなど戦略的な受験が必要になってきます。
募集学部
残念ながらすべての学部がオープンになっているとは限りません。
特に編入学の場合ですと、単位編入できない学部があったり、法学部、教育学部などでも外国人留学生を募集していない学部学科が存在します。
実は大学によってこれら募集学部の有無は異なります。
ある大学では募集していなかった学部が、別の大学では募集されていたというケースはよくあります。

繰り返しになりますが、まずは様々な大学の願書を取り寄せ(ダウンロード)、比較検討するという作業が大事です。
行程④:出願に必要な書類を準備する
出願する学校が決まったらいよいよ書類の準備に着手します。
ここですべてを紹介することはできませんが、以下のような書類を提出しなければなりません。
・自己紹介書(志望理由書)
・パスポートの写し
・高校・大学の卒業(見込み)証明書(アポスティーユ付き)
・高校・大学の成績証明書
・戸籍謄本の原本と韓国語に翻訳したもの(公証付き)
・TOPIKの成績証明書
・銀行の残高証明書
公証とアポスティーユ
韓国に留学する上で避けて通れない専門用語が2つあります。
それが公証とアポスティーユです。
結論から申し上げますと、韓国の大学に留学するためには必ずアポスティーユをした学歴証明書(卒業証明書など)を入学までに提出しなければなりません。
これは韓国法務部の施策によって決まっていることなので例外はありません。
詳細については以下の記事をご覧ください。
要するに国が公式に認めた書類を提出するために必要な手続きだと考えていただいてけっこうです。
一部の人以外は、日本の公証役場や法務局、外務省まで提出する必要が出てくるため、けっこう余裕をもって準備しないといけません。
またビザ絡みの提出書類は、大学側だけではなく政府も関わってくるためルールが変更される可能性もあります。

直近のケースでいうと、卒業見込み資格でのD-2(留学ビザ)が急に認められなくなったり、ある日突然法令が変わったりもします。
行程⑤:自己紹介書・面接対策をする
書類選考の肝となるのが自己紹介書です。
提出書類のほとんどが共通書類になりますが、自己紹介書に関しては書く内容も構成も異なるため合否にかなり影響するものと見て間違いないでしょう。
余談ですが韓国の大学受験でも自己紹介書を提出するのですが、塾に通ったりお金を払って添削を受ける学生が多くいました。
面接も同じく合否に直結するので対策は必須ですが、こちらは可能であれば韓国人ネイティブを相手に何度も練習して臨むべきでしょう。

どうしても面接に苦手意識のある方は、書類選考だけで合否が決まる大学のみを受験するという手もあります。
行程⑥:入学手続きをする
無事に合格通知をもらって安心する暇もなく、すぐに入学手続き(授業料の納付)が始まります。
韓国で語学留学している受験生であれば、韓国の自分の銀行口座から大学の指定口座に振り込めばいいのですが、問題は日本から韓国の銀行口座に送金する場合です。
日本の銀行から国際送金すると、授業料納付期間を過ぎてしまう場合があります。
ですので、個人的には国際送金業者を通して授業料の振り込みをすることをおすすめしています。
- スマホのアプリからでも国際送金できる。
- 送金手数料が銀行に比べると安い。
- 為替レートが優遇されている。
- 最短1日で送金が完了する。
ざっと挙げてみましたが、銀行の窓口で国際送金をするよりメリットが多いです。
日本から仕送りする場合にも使えるのでぜひ検討してみてください。

日本の銀行業務は韓国に比べると非常に時間がかかります。。
行程⑦:渡航準備をする
飛行機のチケットを予約することも大事ですが、その前にD-2ビザ(留学ビザ)を申請しなければなりません。
D-2ビザを申請するためには、合格した大学から「標準入学許可書」を発行してもらいます。
以前であれば原本を送ってくれましたが、最近はサイトからダウンロードしてプリントアウトする形式が増えているようです。

もちろんプリントアウトした入学許可書でビザ申請できるのでご安心を。
韓国の大学留学にかかる経費
さてここからは韓国の大学留学にかかる経費について見ていきましょう。
一例としてソウルにある私立大学の延世大学(文科系統)をサンプルに使用します。
学費(入学金+授業料)
学部 | 1学期の登録金(入学金+授業料)単位:ウォン |
人文・社会科学系 | 353,000 + 3,537,000 |
経済・経営学系 | 353,000 + 3,564,000 |
2022年度基準で入学初年度にかかる学費は、人文・社会科学系の学部だと7,427,000ウォン、日本円に換算すると約69万8千円になります。(他にも諸経費がありますが、こちらは任意です)
参考までに日本の国立大学・私立大学の平均的な初年度納入学費をあげておきます。(参考:文部科学省)
- 国立大学(初年度標準納付金額):817,800円
- 私立大学:1,357,000円
受験費用
韓国の大学に出願する際、出願費用が発生します。
1校出願するのに日本円で1〜3万円かかりますが、日本の私立大学よりは費用が抑えられると思います。
ただし外国人留学試験の場合、公証に必要な手数料(外国文書の場合、1通につき11,500円)が発生します。
また戸籍謄本、銀行の残高証明書など、公的書類を発行するたびに発行手数料がかかります。
生活費・住居費
生活費に関しては個人によって異なりますが、その中でも大きな割合を占める家賃(寮費)を紹介します。
部屋のタイプ | 1学期の寮費(単位:ウォン) |
一人部屋 | 1,970,250 |
二人部屋 | 1,498,500 |
延世大学の場合、一般の韓国人学生寮に比べると外国人学生寮の方が少し値段が上がります。(その分部屋が少し広くなっています)
外国人留学生であれば優先的に学生寮に入れてもらえるので、住居費を安く済ませたければ寮に入ることを一番に考えるべきでしょう。
ただし韓国の大学寮は二人部屋であることが多く、一人部屋が用意されている場合でも競争率が高いので完全に運になります。
また1学期と書いてあるように、韓国の大学寮は夏休みなどの長期休暇期間には部屋を空けなければならないので注意が必要です。(夏休みにも続けて居住する場合には別途申請などが必要)
どうしても一人部屋がいいという場合には、ワンルームを契約することになりますが、その場合だと保証金として最低50万円から100万円は用意しないといけないので初期費用が増えてしまいます。

費用を取るかプライベートな空間を取るか悩むところですが、留学初年度は入寮して途中からワンルームに引っ越す留学生もいます。
アルバイト・奨学金について
2022年現在韓国の最低賃金は9,160ウォン(約865円)で、日本の地方都市と同等かやや高い水準です。
なお韓国の場合、ソウルでも済州島でも同じ最低賃金が適用されます。
外国人留学生も条件を満たせば、アルバイトをすることができます。ただし学期中なのか長期休暇なのかによって就労可能時間が変わってくるので注意が必要です。
アルバイトをする上での注意点
留学期間にアルバイトをすることを前提に渡航する人がいますが、これはあまりおすすめできません。
もうだいぶ前の話ですが、10年前の韓国の最低賃金は日本円で約500円とかなり低い水準でした。なので、筆者自身は小遣い稼ぎという感覚でバイトをしていました。
ところが、現在は日本とそれほど時給が変わらないので、現地でアルバイトをしながら留学をする人も出てきたようです。
それでも
- 条件のよいアルバイト先は韓国人学生にも人気がある。
- 外国人留学生のできるアルバイトには制限がある。
こうした理由でアルバイトを当然できるものと思わない方がいいでしょう。
もちろん、全くアルバイトができないという状況ではないのですが、もしアルバイトができなかったら生活できなくなるという状態での渡航はやめておきましょう。
奨学金は誰にでもチャンスがある
日本で奨学金ときくと「貸与型」と「給付型」が存在するのでややこしい言葉ですが、韓国で奨学金(장학금)という言葉は、給付型であり返済不要なものになります。(貸与型は教育ローン)
多くの大学が独自に奨学金制度を用意しており、主たる対象は成績が優秀である者になりますが、そのほかにも外国人留学生向けの奨学金制度が多く存在します。
例えば、入学時にTOPIK高級(5-6級)の成績保有者は、学費の半額相当が支給されたり、中には初学期の学費が全額免除されるケースもあります。
何度も書いたように韓国の大学に留学するためには、TOPIKの成績表は必要になります。
そしてTOPIKの級数が高ければ高いほど、奨学金がもらえるチャンスが広がるのでぜひTOPIK6級を目標にしてほしいと思います。
韓国留学にかかる予算の目安はいくら?
では結局、いくら留学予算を考えればいいのか。
おそらく韓国留学を考えている方にとって気になる点だと思います。
残念ながら万人に当てはまる数値というものは存在しませんが、目安となるのは、一人暮らしをしている日本の大学生だと思います。
日本学生支援機構(JASSO)の調査結果によると、学生寮で一人暮らしをしている私立大学生の年間生活費(食費、住居・光熱費、娯楽費など)は、平均844,600円、月額に換算すると70,383円です。
同様に下宿・ワンルームでの一人暮らしになると、平均1,091,600円、月額に換算すると90,966円になります。
その上で、これらの数値を参考にするのであれば、韓国留学にかかる生活費は月7万円〜10万円のラインになるのではないでしょうか。
学費は?
学費に関しては、文系・理系ともに日本の私立大学より低くなります。
また奨学金がもらえる可能性の高い大学を受験した場合、入学金や授業料免除などもあるので初年度の学費を節約できる外国人留学生が多いようです。
ソウルにある私立大学が基本的に一番学費が高く、その次に地方私立大学、国立大学が学費が安くなります。
交通費は?
交通費も間違いなく日本より安くなります。
韓国に住んでいると、いかに日本の交通費が高いのかを実感してしまうのですが、バス・地下鉄ともに安く便利に利用できます。
留学生の場合、一時帰国するための費用がどうしても大きくなってしまいますが、LCCなどを利用すれば少しは節約することができるはずです。
まとめ
今回は、韓国留学を実現するための工程と準備、費用について紹介してきました。
留学初心者の方にとっては、何から準備しないといけないのか、何を調べればいいのか分からない場合がほとんどだと思います。
実際に筆者自身も留学するまで何もわかっていませんでした。
留学準備は面倒なこともありますが、決して不可能な作業ではありません。
今回は全体像について書きましたが、今後は別記事でさらに詳細について解説していく予定なのでご期待ください。

韓国語講師&留学カウンセラー【経歴】大学院卒(修士)▶ソウルにある大学に留学▶韓国で日本語教師▶永住権を取得し帰国▶現職。【韓国留学経験】超円高時代(最大1円=16ウォン)だったこともあり学生時代には5つの語学堂に通ったことがあります。
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