今回は韓国への語学留学ではなく韓国の大学・学部に進学する正規留学について解説していきます。
なお当サイトでは語学留学と正規留学について以下のように定義しています。
- 語学留学・・語学堂に入学して主に韓国語を勉強するための留学
- 正規留学・・韓国の4年制大学や専門大学に留学して学位を取得するための留学
- 高校を卒業後、韓国の大学に進学することを考えている。
- 大学に在学しているが、韓国の大学に編入することを考えている。
- 韓国で語学留学した後、そのまま韓国の大学に留学するか迷っている。
- 2012年から2019年まで韓国ソウルに在住。
- 語学留学▶大学留学▶ワーホリ▶永住などの資格で滞在。
- 現役の韓国語講師であり韓国留学コーディネーター。
ちなみに韓国の大学に入学するための手続き自体はそれほど難しくはありません。
ただし準備する過程をしっかり頭の中に入れておく必要はありますので、ぜひ何度もこの記事の内容を見返してみてください。
韓国への留学と入試制度について
まずは外国人留学生が韓国の大学に入学するための入試制度から確認してきましょう。
一般入試(수능/수시/정시)
韓国での大学入試といえば、「修学能力試験」(수능)が有名です。
例年11月の第2木曜日に実施され、日本の「大学入学共通テスト」に該当する大学共通の入学試験です。
それ以外にも高校の成績・内申点を重視する「수시/随試」や修学能力試験の後に受ける「정시/定試」が存在しますが、こちらは韓国人の高校生が対象となる試験です。
外国人特別選考試験
外国人留学生には専用の試験が用意されていますが、大学によって名称は微妙に異なります。
本稿で紹介する外国人特別選考試験は、以下の条件に該当する人が受ける試験のことを指します。
- 志願者とその両親ともに韓国の国籍ではない。
- 高卒(卒業見込み)以上の学歴。
- 学校の定める語学資格を満たす者。TOPIK/TOEFLなど
入学時期
日本より1ヶ月早い3月(春学期)、9月(秋学期)の2学期制です。
ほとんどの大学で春入学、秋入学の外国人留学生を募集しています。
日本の学生の場合、卒業見込みの資格で韓国の大学に3月入学(編入学)すると、空白期間が生まれないので3月入学を目指す学生が多いように感じます。
出願可能な大学
韓国最難関の大学であるソウル大学、KAIST(韓国科学技術院)などの国立大学も受験できます。
他にも留学生に人気のある延世大学や高麗大学などの私立大学も募集しています。
ただし編入学試験については国立のソウル大学、ソウル教育大学では募集をしていないなど、最終的には各学校が公開している願書をじっくり読む必要があります。
韓国の大学・正規留学を実現するまでのステップ
それではここから韓国の大学に進学するまでの全行程について見ていきましょう。
ステップ①:韓国語能力試験を受ける
まずは韓国語能力試験(TOPIK)のホームページに入り、直近で受験可能な日程を確認します。
日本で受験する場合、例年4月、7月、10月に実施されていますが、申込締切が早いため注意が必要です。
ここで大事なことを一つ言っておきます。
韓国への正規留学を目指すのであれば、TOPIKのスコア=パスポートだと思ってください。
すなわちTOPIKの成績表が出せないということは、正規留学の入り口にすら立てないということです。
TOPIK5−6級(高級)を取得することは、それほど難しいことではありません。しっかり対策をすれば誰でも取得可能な資格です。
ステップ②:新入学が編入学か選択する
現在高校3年生の方であれば新入学になります。
一方で現在大学生、専門学生などであれば、4年制大学への編入学という選択肢もあります。
編入学を目指す場合は以下の2つに分かれています。
- 大学2年次への編入
- 大学3年次への編入
編入の基準については、大学によって異なりますので入学願書を確認する必要があります。
編入学のメリット・デメリット
- 学費が2-3年になるので新入学に比べると安くなる。
- 入学後、すぐに専門科目を履修することができる。
- 授業で求められる韓国語レベルの水準が高くなる。
- 新入学に比べると入学難易度が高い。(募集学部が少なくなる)
ステップ③:願書をダウンロードする
ここからがいよいよ大学・学部選びです。
韓国の大学入学願書は、各大学のホームページからPDFファイルをダウンロードする形式がほとんどです。(無料です)
もし紙で願書を読みたいという人は、自宅やコンビニでプリントアウトして読む必要があります。
入学願書を手に入れたら、以下の項目について見比べてみましょう。
- 受験日程
- 募集学部
- 面接の有無
受験日程
例えば、A校とB校の併願を考えている場合、面接日が被っていると問題ですよね。
このあたりは日本の私立大学受験と似たような感覚になりますが、確実に韓国の大学に進学したいというのであれば、最低1校は併願しておくべきだと考えます。
募集学部
実は全ての学部が募集しているとは限りません。
特に編入学の場合になると、単位編入ができない学部があったり、外国人留学生を募集していない学部学科がいくつか存在します。
ですが、注意しないといけないのは大学によってこれら募集学部の有無は異なります。
ある大学では募集していない学部が別の大学では募集しているというケースはよくあります。
面接の有無
韓国の外国人留学生試験は、書類選考か面接試験、実技試験の大きく3種類に分かれています。
国立大学では面接試験を採用する傾向にあり、私立大学は書類選考のみという大学が多いです。
書類選考に関しては、後述する自己紹介書が評価に大きく影響するのでしっかり準備する必要がありますし、面接に自信のある方は、あえて面接を選ぶなど戦略的な受験が必要になってきます。
ステップ④:出願に必要な書類を準備する
出願する大学が決まったらいよいよ書類の準備に着手します。
提出書類は大学によって異なるため全てを紹介することはできませんが、代表的な書類として以下のものがあります。
- 自己紹介書・志望理由書
-
ほぼ全ての大学で提出が必須のエントリーシートです。韓国語(又は英語)で1,000〜4,000字は書かないといけないので留学生にとって一番大きな関門です。
- パスポートの写し
-
当たり前すぎるのですが、海外に行くにはパスポートが必須になるので早めに準備しておきましょう。できれば保護者の方のパスポートもあると比較的準備が楽になります。
- 高校・大学の卒業(見込み)・成績証明書 ※アポスティーユ付き
-
こちらもほぼマストの提出書類です。「アポスティーユ」については後述します。
- 戸籍謄本の原本と韓国語に翻訳したもの ※公証付き
-
韓国語で「家族関係証明書 /가족관계증명서」と書かれていますが、日本では戸籍謄本がその役割をしています。こちらは日本語でしか発行されないので韓国語に翻訳したものを提出します。(「公証」については後述)
- TOPIKの成績証明書
-
語学能力を証明する一番基本となる提出書類です。その他には語学堂の修了証で代替できる大学もあります。
- 銀行の残高証明書
-
D-2(大学留学)ビザの場合、$20,000(日本円で230万円以上)の残高証明書の提出が求められるケースがほとんどですが、大学によって多少異なります。
補足:公証とアポスティーユ
韓国に留学する上で避けて通れない専門用語が2つあります。
それが公証とアポスティーユです。
結論から書くと、韓国の大学に留学するためには必ずアポスティーユをした学歴証明書(卒業証明書など)を入学までに提出しなければなりません。
これは韓国法務部の施策によって決まっていることなので例外はありません。
詳細については以下の記事をご覧ください。
ステップ⑤:自己紹介書・面接対策をする
書類選考の肝となるのが自己紹介書です。
提出書類のほとんどが共通書類になりますが、自己紹介書に関しては書く内容も構成も異なるため合否にかなり影響するものと見て間違いないでしょう。
余談ですが韓国の大学受験でも自己紹介書を提出するのですが、塾に通ったりお金を払って添削を受ける学生が多くいました。
面接も同じく合否に直結するので対策は必須ですが、こちらは可能であれば韓国人ネイティブを相手に何度も練習して臨むべきでしょう。
ステップ⑥:入学の手続きをする
無事に合格通知をもらって安心する暇もなく、すぐに入学手続き(授業料の納付)が始まります。
韓国で語学留学している受験生であれば、韓国の自分の銀行口座から大学の指定口座に振り込めばいいのですが、問題は日本から韓国の銀行口座に送金する場合です。
日本の銀行から国際送金すると、授業料納付期間を過ぎてしまう場合があります。
ですので、個人的には国際送金業者を通して授業料の振り込みをすることをおすすめしています。
- スマホのアプリからでも国際送金できる。
- 送金手数料が銀行に比べると安い。
- 為替レートが優遇されている。
- 最短1日で送金が完了する。
ざっと挙げてみましたが、銀行の窓口で国際送金をするよりメリットが多いです。
日本から仕送りする場合にも使えるのでぜひ検討してみてください。
ステップ⑦:渡航準備をする
飛行機のチケットを予約することも大事ですが、その前にD-2ビザを申請しなければなりません。
D-2ビザを申請するためには、合格した大学から「標準入学許可書」を発行してもらいます。
以前であれば書類の原本を郵送してくれていましたが、最近はどこの大学もホームページからダウンロードしてプリントアウトする形式が増えているようです。
韓国の大学留学にかかる費用
さてここからは韓国の大学留学にかかる経費について見ていきましょう。
一例としてソウルにある私立大学の延世大学(文科系統)をサンプルに使用します。
学費(入学金+授業料)
学部 | 1学期の登録金(入学金+授業料)単位:ウォン |
---|---|
人文・社会科学系 | (353,000 + 3,537,000)ウォン |
経済・経営学系 | (353,000 + 3,564,000)ウォン |
2022年度基準で入学初年度にかかる学費は、人文・社会科学系の学部だと7,427,000ウォン、日本円に換算すると約76万円になります。(他にも諸経費がありますが、こちらは任意です)
参考までに日本の国立大学・私立大学の平均的な初年度納入学費も挙げておきます。
日本の大学 | 初年度納入学費 |
---|---|
国立大学 | 817,800円 |
私立大学 | 1,357,000円 |
出願にかかる費用
韓国の大学に出願する際、出願選考手数料が発生します。
1校出願するのに日本円で1−3万円かかりますが、日本の私立大学と同等かそれ以下の費用になると思います。
ただし外国人留学試験の場合、公証に必要な手数料(外国文書の場合、1通につき11,500円)が発生します。
また戸籍謄本、銀行の残高証明書などの提出書類を発行するたびに手数料がかかります。
生活費・住居費
生活費に関しては個人によって異なりますが、その中でも大きな割合を占める家賃(寮費)を書いておきます。
部屋のタイプ | 1学期の寮費(単位:ウォン) |
---|---|
一人部屋 | 1,970,250 |
二人部屋 | 1,498,500 |
延世大学の場合、一般の韓国人学生寮に比べると外国人学生寮の方が少し値段が上がります。(その分部屋が少し広くなっています)
外国人留学生であれば優先的に学生寮に入れてもらえるので、住居費を安く済ませたければ寮に入ることを一番に考えるべきでしょう。
ただし韓国の大学寮は二人部屋であることが多く、一人部屋が用意されている場合でも競争率が高いので完全に運になります。
また1学期と書いてあるように、韓国の大学寮は夏休みなどの長期休暇期間には部屋を空けなければならないので注意が必要です。(夏休みにも続けて居住する場合には別途申請などが必要)
どうしても一人部屋がいいという場合には、ワンルームを契約することになりますが、その場合だと保証金として最低50万円から100万円は用意しないといけないので初期費用が増えてしまいます。
アルバイトについて
2022年基準で韓国の最低賃金は9,160ウォン(約900円)で、日本の地方都市と同等かやや高い水準です。
なお韓国の場合、ソウルでも地方でも同じ最低賃金が適用されます。
外国人留学生も条件を満たせば、アルバイトをすることができます。ただし学期中なのか長期休暇なのかによって就労可能時間が変わってくるので注意が必要です。
なお留学期間にアルバイトをすることを前提に渡航する人がいますが、これはあまりおすすめできません。
もうだいぶ前の話ですが、10年前の韓国の最低賃金は日本円で約500円とかなり低い水準でした。なので、筆者自身は小遣い稼ぎという感覚でバイトをしていました。
ところが、現在は日本とそれほど時給が変わらないので、現地でアルバイトをしながら留学をする人も出てきたようです。
それでも
- 条件のよいアルバイト先は韓国人学生にも人気がある。
- 外国人留学生のできるアルバイトには制限がある。
こうした理由でアルバイトを当然できるものと思わない方がいいでしょう。
もちろん、全くアルバイトができないという状況ではないのですが、もしアルバイトができなかったら生活できなくなるという状態での渡航はおすすめしません。
奨学金制度について
日本で奨学金ときくと「貸与型」と「給付型」が存在するのでややこしい言葉ですが、韓国で奨学金(장학금)という言葉は、給付型であり返済不要なものになります。(貸与型は教育ローン)
多くの大学が独自に奨学金制度を用意しており、主たる対象は成績が優秀である者になりますが、そのほかにも外国人留学生向けの奨学金制度が多く存在します。
例えば、入学時にTOPIK高級(5-6級)の成績保有者は、学費の半額相当が支給されたり、中には初学期の学費が全額免除されるケースもあります。
何度も書いたように韓国の大学に留学するためには、TOPIKの成績表は必要になります。
そしてTOPIKの級数が高ければ高いほど、奨学金がもらえるチャンスが広がるのでぜひTOPIK6級を目標にしてほしいと思います。
まとめ:韓国での留学生活にかかる費用の目安は?
では結局、いくら留学費用を考えればいいのか。
おそらく韓国留学を考えている方にとって気になる点だと思います。
学費・寮費
以下のデータは当サイトで独自に算出した2年間でかかる学費・寮費(編入学希望者用)です。
大学 | 2年間(4学期)でかかる入学金・授業料・寮費(2人部屋) |
---|---|
延世大学 | 1,9316,080ウォン / 2,051,807円 |
高麗大学 | 22,877,000ウォン / 2,429,980円 |
梨花女子大学 | 19,642,760ウォン / 2,087.026円 |
慶煕大学 | 20,486,400ウォン / 2,176,815円 |
ソウルの名門私立大学の文系学部を基準に算出していますが、一つの目安として2年間で200万円前後というのが相場だと思います。
地方の国公立大学、私立大学に進学する場合は、それよりも安くなりますし、また入学時TOPIK奨学金制度の恩恵を受けることのできる大学に進学した場合には、ソウル圏の大学でも150-70万円前後になることもあります。
生活費
残念ながら万人に当てはまる数値というものは存在しませんが、目安となるのは、一人暮らしをしている日本の大学生だと思います。
日本学生支援機構(JASSO)の調査結果によると、学生寮で一人暮らしをしている私立大学生の年間生活費(食費、住居・光熱費、娯楽費など)は、平均844,600円、月額に換算すると70,383円です。
同様に下宿・ワンルームでの一人暮らしになると、平均1,091,600円、月額に換算すると90,966円になります。
その上で、これらの数値を参考にするのであれば、韓国留学にかかる生活費は月7万円〜10万円のラインになるのではないでしょうか。
おわりに
今回は、韓国の大学に正規留学するための工程と準備、費用について紹介してきました。
留学初心者の方にとっては、何から準備しないといけないのか、何を調べればいいのか分からない場合がほとんどだと思います。
実際に筆者自身も留学するまで何もわかっていませんでした。
留学準備は面倒なこともありますが、決して不可能な作業ではありません。
今回は全体像について書きましたが、今後は別記事でさらに詳細について解説していきたいと思います。
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